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失踪と徘徊

台風7号が通り過ぎた。
雨の音も風邪の音もしなかったせいか、ガッツリ二度寝した。
出勤する妻に起こされ外に出たら、ジリジリ暑い夏に戻っている。
今日も体温越え確定だな。

昨日の施餓鬼会は大雨のなか行われたが、例年の1/3くらいの人数しか集まらなかった。
そりゃそうだよな、山の中のお寺さんだから土砂災害のことを考えたのだろう。
台風接近時にはどうなることかと思っていたが、
送り盆は雨の上がった少しの間を狙って、夕方6時ごろにお墓に行くことができた。


一昨日の夕方のはなし、
久しぶりに友人と会うために外出する長男を駅まで送って帰って来たら、
本家の娘さんに、「七ちゃん、ウチのおばあちゃん見なかった?」と聞かれた。
「もしかして」と思ったら予想通りだった。
「わかった、俺も探すよ」と言って長袖長靴、懐中電灯を持って辺りを探した。
近くに住む俺の叔父さんや従弟にも手伝ってもらった。帰省中の長女も探してくれた。
本家のおばさんはウチのばあちゃんと同年代の91歳、以前にも何度か行方不明になっている。

道路を徘徊していれば誰かが声をかけてくれるだろうと、俺たちは夕暮れの山に入った。
前回おばさんが居なくなったとき、おばさんを見つけたのは山の中だった。
今は山林になっているのだが、昔は畑だったという記憶が残っていて、
そこの草むしりに行くつもりだったらしい。
前回は1時間足らずで発見することができたので、今回も簡単に考えていた。

時刻は午後5時、辺りが真っ暗になる前に見つけなくちゃ。
山中を探すこと1時間半、辺りも少しずつ暗くなってきた。
山を下りると近所の人達もおばさんを探してくれていた。
真っ暗になって、もしものことがあったらいけないと近所の駐在所に駆け込んだ。
警察に言えば消防署も役所も消防団も動いてくれる。

駐在所の玄関でおばさん失踪の話をしていると、道を挟んだ山の中から声が聞こえた。
「お~い、道が無くて下りられなくなっちゃったんだよ~」
おばさんの声だった。皆はホッと胸をなでおろした。
動けなくなったおばさんをおんぶして山の斜面を下りた。
おばさんの話に、気づいたら家に誰も居なくて不安になり、
数十年前に既に亡くなっているおばあさんを探しに出たら、山道を間違えてしまったのだそう。
前回の時と歩いて行った方向は一緒だったので俺たちの予想もあながち間違いではなかった。

運悪く、お盆中は毎日デイサービスに行けくことができず、
近くに住む娘さんとお孫さんが2時間ほど目を離した隙の出来事だったそうだ。
時刻は午後7時を過ぎ、おばさんを救出した時には辺りは真っ暗になっていた。

これがもし1日ズレて、台風の雨の中だったと考えたら恐ろしくなる。
何はともあれ、大事に至らなくて良かった。


つづく。


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