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49歳の赤ん坊

(2019.12.12の日記より)
今日は入院当初のことを振り返ってみよう。
たまに思い出さないと、過去のこととして忘れてしまいそうになるからだ。
これは、恥ずかしくても俺が一生背負っていかなければならない事実なのだ。

この病気になる以前は、
「毎日飲んでるの? 飲みすぎると寿命を縮めるよ」と言われると、
「うん毎日、1年で400日飲んでるよ。病気になったらやめるよ」
「俺は太く短く生きるよ」と笑って返していた。もうこの時点で病気である。
実際、周りの人たちも俺と同じような飲み方をしていた。
「俺だけは大丈夫」なんて思いもなかった。みんなと一緒、当たり前のことだと捉えていた。
「節酒」「禁酒」「断酒」なんて考えたことも無かった。
俺を送り出す妻の「あまり飲み過ぎないでね」の言葉も社交辞令と化していた。

ある日、それは現実となって俺を突き刺した。
突然にということでは無い。じわじわとアルコールが俺の身体と脳ミソを蝕んでいった。
途中途中で“ちょっとヤバイな”と思える症状があったのも前述の通りだ。
バレたら飲めなくなってしまう、隠さなくちゃ。
俺の隠蔽工作は続いたが、大量の吐血と下血、腰が立たなくなり思考も停止。
ついに酒との断絶の時は来た。

入院当初の俺は、まるで赤んぼうのようだった。
三度の食事も用意され、薬もベッドまで運んでもらった。
残りの時間は壁のタイルの目地の本数と天井のビスの数を数えるだけ、
仕事のことも子供たちのことも、俺の頭の中には無かった。
「考える」という概念が欠落し、俺は落ちるところまで落ちた。
施錠された檻に閉じ込められても、窓が解放できなくても、外出できなくても、
お金と携帯を没収されても、何の疑問も抱かなかった。
妻の面会だけが楽しみだった。
頼んでおいたマンガ本買ってきてくれるかな?コカコーラゼロ買ってきてくれるかな?
看護師に見つからないようにチョコレート持ってきてくれるかな?
妻子持ちの49歳のおじさんの思考回路ではなかった。
  
その後、自分を徐々に取り戻し過去の自分を猛反省することになる。
ゼロからの再出発ではない。
人に迷惑をかけた分を入れるとマイナスからの再出発だ。
アルコール性肝炎も進行していて重度の肝硬変になっていた。
ゴールまでの距離も健康な人より短くなった。
短距離ランナーにはなってしまったが、
とりあえずハンデ付きのスタートラインには付くことが出来た。
  
悔い無くこれからを生きていくよ。
  
つづく。



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