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ばあちゃん退院

気管支喘息の発作が強く出て、先週末から入院していたばあちゃんが退院した。
入院したその翌日には調子が良くなり始めていたが、
主治医が水曜日しか診察しないということで、診察を受けてから木曜日の退院となった。

たった5日間の入院期間ではあったが、ばあちゃんは、
「退屈だ~」、「ベッドの上ばかりだと足が脆くなる」、「ごはんが不味い」
もう言いたい放題である。

入院時に買って持たせたテレビカード2枚も使い果たし、買い足したそう。
それに、俺と妻ばかりでなく姉や孫たちにまで毎日電話がかかってくる。
たぶん自分の弟である叔父さんたちにも電話の嵐だったであろう。
通話オンリーのばあちゃんのスマホでは、メールもLINEもムリ。
登録した番号も出せないから、みんなの電話番号を書いたメモ帳を持ち歩いている。

午後2時の退院ということで、パートが休みの妻と一緒にばあちゃんを迎えに行った。
1階の受付で退院手続きを終え不足分の入院費用を支払った。
コロナの影響で病室には入れないということなので、
病棟のある3階まで上がり、スタッフさんの指示でEVホールで待つことにした。
だが待てど暮らせどばあちゃんは病室から出て来ない。
何かあったのかとナースセンターで聞いてみると、薬剤師との話しをしているそう。
だが30分もかかる話があるのか?
案の定、過去にかかった自分の病気のことと飲み続けている薬について、
事細かに説明していたら遅くなったのだそうだ。
ばあちゃんの性格でだいたい予想はしていたが、
自慢話と苦労話を聞いている薬剤師もたいへんだ。

病院を出発すると開口一番、「ごはんが不味かった、甘い物が食べたい」
と言うので帰り道にコンビニに寄った。
病院内では車いすだったのに、コンビニには徒歩でスイスイ歩いて行った。
「活字に飢えていた」と週刊誌も2冊買っていた。
「病院のスタッフさんに言って1階のコンビニで買ってきてもらえばよかったのに」
と言うと、「めんどくさいから」と、 他人にお願いが出来ない病なのだ。
さあこれで家に帰れると思ったら、「お刺身が食べたい」
と言うので魚屋に寄った。
これで午後の仕事は諦めて翌日に持ち越しとなった。

ばあちゃんにとって、自分に従順であり「いいこいいこ」と溺愛している、
家ネコのみぃと会えないのがホントに辛かったそうだ。

とにかく自分を中心に地球が回らない時が済まない人だ。
「周りに迷惑をかけないうちに施設に入る」と言っていたばあちゃんだが、
たった5日の入院で音を上げるようでは、
施設の中で集団生活なんてとうぶん無理そうである。

と、精神病院に5か月間、毎日1500kcalの食事で入院していた俺が言う。


つづく。


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