少しスッキリ

俺たち夫婦が結婚したのは27年前、2人とも25歳の時だ。
当時の俺は建設会社の現場監督だった。
結婚を機に、家業を継ぐため家に戻った。
妻は丸の内OLで、給与も賞与も安月給の現場監督の俺とは雲泥の差だったが、
妻も結婚を機に会社を退職し、専業主婦となった。
当時は寿退社する女性も珍しくは無かった。

結婚して1年目は、俺が一級建築士、妻が宅建の資格取得に励んだ。
空いた時間は2人とも勉強をする時間に費やした。
2年目に長女を授かり、住まいも俺の実家に引っ込んだ。
その半年後、親父が脳梗塞で倒れ、俺は突然社長となった。
それからは全てが手探りだった。
俺は仕事とお付き合いに、妻は家事と子育てに忙しかった。
酒も毎晩よく飲んだ。
20年後にアル中になるとも知らずに。

妻は蔵書整理のバイトをしていたが、いずれはうちの事務仕事をしてもらうつもりだった。
現在は、3年前から図書館のパートに出ている。

昨日のような口論になると、いつも出てくる言葉は、
「結婚していなかったらなぁ」
「仕事を辞めていなかったらなぁ」
「家がこんな田舎じゃなかったら子供の送り迎えもしなくて済んだのになぁ」
「あたし独りで残されて、老後はどうしたらいいの？」

もう俺が早死にすることが前提である。

酒に逃げ、アルコール依存症と肝硬変を併発し、とどめに肝細胞癌だ。
それに癌はいつ再発するか、どこに転移するもわからない。
自業自得、諸悪の根源が俺にあるのはわかっている。
妻も、俺が言い返せないことを知っているから言いたい放題だ。

家事は、掃除、食器洗い、ゴミ出し、2匹のネコの世話を始業前に毎朝している。
精神病院退院後は子供の送り迎えも俺が担当していた。
料理と洗濯は手を出していない。
遅ればせながら、規則正しい生活リズムと健康的な食生活を心がけ、
病院への通院、定期的な検査も怠らず、
少しでも長く生きしようと思って努力しているのになあ。

2日にかけて書いたら少しスッキリした。
今日も1日がんばろう！

つづく。



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