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「どん底付き」

俺は注射が嫌いだ。
あれだけ無痛のコロナワクチンも、点滴の針でさえも、
「ハイっ打ちますよー」と言われると、手汗をかき鼓動が激しくなる。

自分の不注意でケガを時は、全ての責任が自分にあるのであまり痛いとは感じない、
と言うか、痛いと思ってはいけないといった発想になる。
要は、他人に痛くされるのが嫌いなのだ。
その最たるものが、去年椎間板ヘルニアが発症したときのブロック注射だ。
あまりの激痛に大声で叫び、のたうち回った。
あの痛みを二度と味わいたくないから、毎朝のストレッチは欠かさない。

その点、内臓や脳の手術の時には全身麻酔で眠らされた上に、
詳しく調べたわけではないが内臓には痛点が無いらしく、術後も患部は痛くなかった。
あまり考えたくないことだが、もし再発してガンの摘出手術をすることになったとしても、
手術に対する恐怖心は微塵も無い。

これをアルコール依存症に当てはめてみよう。
深酒をすると、二日酔いによる頭痛はあるが、
どんなにアルコール度数の高い酒を飲んでも、舌や胃に痛みは感じない。
逆にジリジリ焼ける感覚を楽しんでいたりする。
5年前の末期症状のころ、酒の飲み過ぎで胃が裂けて吐血下血した時も痛みはゼロだった。

断酒を始めようと意気込んでも、
「健康のために酒をやめよう」とか、「お小遣い節約のために酒をやめよう」
その程度の意気込みでは、うちの妻のダイエットと同じように、
三日坊主で、なかなかうまくは行かないものである。

それが、「飲むと人を傷つけるよ」とか、「次は警察に捕まるよ」とか、
極めつけには俺みたく、「飲んだら死ぬよ!」と言われれば、
否が応でも年貢を納めざるを得なくなってしまう。
実際に、俺と同じ肝硬変を持ちながらも再飲酒が止まらずに亡くなられた人の話も居る。

アルコール依存症者が、「底つきを経験しないと酒はやめられない」と言われるのは、
そういった切羽詰まった究極の選択をしなくてはならなくなるからだ。
本人の断酒の意志が大前提ではあるが、
酒に脳が支配された依存症者にとって、酒を取り上げられるということは、
そこまでの覚悟と努力が必要になってくる。

最近では、「底つきは必要ない」、「底つき経験は有害だ」と言われ始めている。
「もうこれ以上失うものはない」という状態を底つき体験と呼んでいる場合が多いが、
そこまで深刻化してしまうと様々なものを再獲得するのも大変だし、
重症化していることも多いので、死亡のリスクや身体的なダメージも大きくなる。
だから、何かを失う前に治療や回復を始めたほうが良い、
という意味で「底つきは必要ない」と言われている。

だが、8月31日になって切羽詰まらないと夏休みの宿題を始めない子供が多いのも事実。
俺のように、「底つき」を通り越して、
寿命を縮める羽目になってしまった「どん底付き」を経験する前に、
手遅れになる前の軽傷のうちに気づいてもらいたい。


つづく。



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